認証コードが届かないという罪

「送信しました」の期待と裏切り

「登録メールアドレス宛に認証コードをお送りしました。」

その一文を見た瞬間、わたしの心は軽く躍った。
「よし、これでログインできるぞ!」
しかし、その喜びも束の間、メールボックスを開くと――何もない。

届かないメールに広がる疑念

いやいや、落ち着け。
こういう時はまず迷惑メールフォルダを確認するのが基本だ。
……ない。
では、受信トレイを更新してみよう。
……やっぱりない。

「どういうことだ?」

わたしの中に、じわじわと不安が広がる。

怒るよりも、まず自分を疑う癖

普通なら、ここで怒りが湧いてもいいはずだ。
「送ると言ったのに届かないじゃないか!」と、
キーボードを机に叩きつけるくらいの勢いで憤る場面だ。

だが、わたしは違う。

なぜか、怒りよりも先に「自分が悪いのでは?」という卑屈な疑念が湧いてしまうのだ。

ログイン失敗の黒歴史がよみがえる

「そもそも、わたしは正しいメールアドレスを入力したのか?」
「もしかして、違うサイトにログインしようとしていないか?」

さらに過去の記憶が蘇る。
かつてわたしは何度もログインに失敗してきた。

・パスワードを5回間違えて、アカウントをロックした夜
・大文字・小文字の区別に気づかず、「ログインできない!」と騒いだ朝
・3年前、登録時に「.com」を「.co」で送信していたことに気づかず、運営に問い合わせたあの日

認証とは、自分の過去と向き合うこと

ひとつ、またひとつと思い出すたび、わたしは深い懺悔の気持ちに苛まれていく。

これはもはや、ただの認証コードの問題ではない。
わたしはログインという行為そのものに対して罪を犯してきたのではないか?

画面を見つめながら、わたしは無意識に手を合わせていた。

「ごめんなさい……」

それでも、今回ばかりは運営のせいだと思った

もしかすると、これはわたしに与えられた試練なのかもしれない。
過去の全てのログイン失敗を償うまで、認証コードは届かないのかもしれない。

「認証とは、すなわち己の過去との対峙である」

そう悟った瞬間、わたしは膝をついた。

だが、ふと気づく。
いや、もしかしてこれは向こうのシステムの問題なのでは?

サーバーが混雑しているとか、運営のメール送信プログラムが一時的に停止しているとか。

最後にたどり着いた、変わらぬオチ

実際、「認証コードが届かない」問題はよくあることだ。
そう考えると、わたしの罪はそこまで重くないのでは?

「そうだ、わたしは悪くない!」

わたしの中に、久々に正当な怒りが芽生えた。
運営の怠慢を許してはならない。
これまでのログイン失敗は、確かにわたしのミスだったが、今回は違う!

意を決して、運営のサポートページを開く。
「認証コードが届かない場合」
そこに書かれている対処法をひとつずつ確認していく。

・迷惑メールフォルダを確認する(済)
・受信トレイを更新する(済)
・正しいアドレスを入力しているか確認する(……)

ここで、わたしの視界がぐらついた。

アドレスをもう一度確認すると、
「.com」が「.co」になっている。

3年前とまったく同じミスである。

「ああああああああ!!!!」

わたしはこの運命から逃れられない

わたしは崩れ落ちた。
結局、悪いのはわたしだった。

「悪いのは向こうだ!」と怒ったわたしの顔は、泣いてるのか笑ってるのかよくわからないピエロのような表情になってるに違いない。

ログインに失敗した者は、またログインに失敗する。
わたしは、この運命から逃れられないのかもしれない。

そして、手帳に誓いを書く

最後に、わたしは誓う。
二度と認証コードが必要になるような事態には陥らないようにしよう。
手帳にパスワードを書こう。

たとえそれが時代遅れで、セキュリティ的に推奨されていなくても、この苦しみを二度と味わいたくないからだ。

そう決めた瞬間、わたしはそっと手帳を開き、そこに震える手でこう書き記した。

「パスワード:次こそは間違えない」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です