お台場と板。不審者と相棒の絆

お台場でタップの稽古を終えた帰り道、なんとなく海浜公園に足を向けてみた。
そこには幸せそうなカップルや家族連れが絵に描いたような光景を繰り広げていた。笑顔、手を繋ぐ姿、カモメを指さしてはしゃぐ子どもたち。これは観光ポスター用の撮影現場か何かだろうか。

そんな中、わたしはタップ板を抱えてうろついていた。目的もなく。
……不審者感がすごい。自覚しているだけに余計に居心地が悪い。ここはきっとわたしがいるべき場所ではない。

ふと、抱えていたタップ板が微かに身じろぎしたように感じた。
「お前、こんなところに連れてきてどうするつもりだ?」と問いかけてくるように思えた。
幸せな人々の中に、そこそこのサイズのタップ板を抱えた不審者が混ざり込むというこの状況は、もはやシュールなコントに近い。
結果、わたしはそそくさとその場を後にした。海風が背中を押すように感じたのは勘違いではなかったはずだ。

お台場の海浜公園は、幸せな人々のための舞台だ。わたしとタップ板が演じる場面には、どう考えてもそぐわない。だがそれもまた一つの思い出だと思うことにした。「不審者と板、マジックアワーの海辺を行く」という独自の映画のような記憶が、今ここに刻まれたのだ。

幸せな人々が海辺で笑っている間に、不審者と板もまた、海風を浴びながら静かに物語を紡ぐ。そんなお台場が、わたしはちょっと好きかもしれない。

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