アールグレイへの愛と、シャルドネの背徳感。紅茶二股人生の苦悩

おぉ、アールグレイ。
わたしの紅茶人生は、あなたとともにあった。鮮烈なベルガモットの香り、ほんのり苦みを帯びた上品な味わい。あなたを口にするたび、わたしは「ああ、紅茶って人生だな」と思ってきた。だが、その忠誠心を根底から覆す事件がコンビニの冷蔵棚で起きた。

「シャルドネ香るストレートティー」
その文字を目にした瞬間、何かが胸の中でざわめいた。「ふん、ただのストレートティーだろ?」と嘲る自分と、「でも、ちょっと飲んでみてもいいんじゃない?」と囁く裏切り者の自分が、頭の中で殴り合いを始める。いや、そもそも私はアールグレイ派だ。ストレートティーなんて眼中にない。ましてや「シャルドネが香る」とか言われても、「紅茶にワインぶっかけたのか?」くらいにしか思わない。

だが、その日はなぜか手が勝手に動き、シャルドネ香るストレートティーをカゴに入れていた。そして気づけば、レジを通り、ペットボトルのキャップを開けていた。

一口飲む。
その瞬間、全てが終わった。

「美味い! 美味すぎる!」
シャルドネの香りがふわっと鼻を抜け、舌の上で紅茶のやわらかい甘みが広がる。このストレートティーに、どうして私はこんなにも心を奪われているのか。ティーの前にダージリンやアッサムのような、オシャレだけどよく分からない、でもなんかカッコいい横文字が何も付属しない、ただのストレートティーごときがここまで私を虜にするとは。アールグレイよ、許してくれ…。

それからというもの、コンビニに行くたび、私は悩むようになった。「今日はアールグレイにするか? いや、でもシャルドネが…」と、紅茶棚の前で葛藤する時間が日々増えていく。アールグレイを手に取るたび、隣に並ぶシャルドネのボトルが、「裏切り者」と囁いてくる気がする。

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